マウロとノンナ

水の都・ヴェネツィア。迷路のように交わる運河に人々の歓声がこだまする。ゴンドラが揺れる水面に映るのは、遠い歴史の幻影だ。
冬のカーニバル、夏の映画祭、そして美術展覧会・ビエンナーレ…。世界を魅了してやまない文化都市は、訪れるたびに特別な”物語”を旅人に与えてくれる。

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そんな華やかな国際都市も、ひとつ路地裏に入れば静かな佇まいを見せる。その一角にある最上階の部屋からは、レンガ色の屋根が続く先にバジリカの鐘楼まで見渡せる。いっぱいに開けた窓から入る海風が心地良い。

この部屋で暮らすのは28歳の青年・マウロ。クラシック音楽史・博士課程Ph.D.を専攻するかたわら、地元FMラジオ局でクラシック音楽番組のナビゲーターを務める。部屋にはピアノが置かれ、音楽の専門書や楽譜がびっしりと並んでいる。

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彼の実家は同じヴェネツィア県の小さな町にあり、そこからわずか3kmほど離れたヨーレおばあちゃんの家はもうパドヴァ県だ。ヴェネト州の真ん中、内陸部の典型的な田園風景のなかで、マウロは育った。

ヨーレおばあちゃんは1938年生まれ。夫・グラツィアーノさんとの間に3人の子供をもうけた。マウロの母・マウリツィアさん以外の2人、ドメニコおじさんとカテリーナおばさんはそれぞれの家族と一緒に、今もヨーレおばあちゃんの大きな家に住んでいる。

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マウロと私たちが家に到着したときには、すでにヨーレおばあちゃんは料理を始めていた。
今回ランチにつくっていただいたのは、ヴェネト州の伝統料理「リーズィ・エ・ビーズィ」。ヴェネト方言で「お米とグリーンピース」のスープである。
急いで荷物を置き、手際よく料理するおばあちゃんの話に耳を傾けた。

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【リーズィ・エ・ビーズィ】 Risi e Bisi

1.フライパンにオリーブオイルをひき、刻んだタマネギ、ポロネギ、パンチェッタを強火で炒め、少々の白ワインで香りをつける。パンチェッタの代わりにスペックを使ってもよい。

2.グリーンピース、固形ブイヨン、塩、黒コショウを加え、弱火にする(ジャガイモを入れる場合はとろみがつく)。途中、刻んだパセリとバターひとかたまりを入れ、20-30分ほどじっくり炒める。このあいだ、絶対にキッチンを離れないこと(パセリなど庭に採りにいかない!)。焦げつきそうなときは水か白ワインを加える。

3.火を止める。炒めたグリーンピースの一部を水または湯を加えながらパッサ・ヴェルドゥーラ(裏ごし器)でこし、残ったグリーンピースとともに、別に茹でておいた鍋の湯に合わせる。塩、少々の固形ブイヨン、オリーブオイルで味を調整する。

4.お米を入れる。スープ(ミネストラ)にするので煮込む時間は15分ほど。ちなみにもしリゾットにするなら時間は20分ほど。

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