フェデリカとノンナ

食事を終えた後、フェデリカが地下の貯蔵庫を案内してくれた。ここには亡くなったヴァレリオおじいさんのワインコレクションが今もそのまま眠っている。ヴィンテージのリキュールも貴重なものばかりだ。

ローラおばあちゃんは夫のお酒を時折家族に振舞うといい、今日は特別に食後酒としてヴィン・サントを飲ませてくれた。約25年前にヴァレリオさんが仕込んだ手づくりだという。

グラスに満たされたヴァレリオさんの家族への想いは、甘美で優しい味だった。グラスを傾けるたび、皆が笑顔に包まれる。身体に沁みゆくほど、胸を熱くする。今もなお天国から微笑みかける味だった。

最後の「かくし味」を飲み干したとき、ローラおばあちゃんの食卓にすっかり酔っていた。

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今はフィレンツェで暮らすフェデリカだが、ローラおばあちゃんの家から徒歩10分ほどの実家で育った。
いつも母グローリアさんやローラおばあちゃんと一緒に料理をしていた。特にドルチェづくりが大好きで、そのためにモンテカティーニの町の料理学校に進学するほどだった。

16歳の夏、いとこのユーリくん(Yuri)が経営するリストランテでカメリエーラ(ホール)として働く。
5年課程の料理学校を卒業した18歳のとき、イギリスに留学し、1年半の間イタリアンレストランで働きながら英語を勉強した。
帰国後、フィレンツェの名店・チブレオで働きながらフィレンツェ大学に進学。同時に、大好きだったジャズ&ブルースの歌手の勉強も始めた。

大学では食品工学(Tecnologie alimentari)を専攻している。
生産工場から一般市場で販売される過程の、食品の品質管理方法や調査を学んでいる。
卒業後、食品管理の不正を見極める分析や、リストランテの衛生調査などを行う仕事に就きたいという。

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夢を語るフェデリカの瞳は、少女のように澄んでいる。心から料理が好きなのだ。食を通して世界中の人々を幸せにしたいと考えている。ローラおばあちゃんが、ずっと自分にそうしてくれたように…。

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取材: 2015-09-17
本文: Yusuke Nomiya
撮影: Kinji Moriyama, Michela Piazzai


トスカーナ州の料理